サンゴイソギンチャク<イソギンチャク解説>

その他無脊椎動物
その他無脊椎動物

どうも、C34H34N4O4です。

今回ご紹介するのはサンゴイソギンチャク。

本種はマリンアクアリウムにおいて飼育されるイソギンチャクの中でも入門向けの種といえ、比較的飼育が容易な種類です。

クマノミ類とも共生するので、はじめてのイソギンチャクとの共生シーンを観察するにも最適といえるでしょう。

ただし、クマノミの種類によってイソギンチャクに選好みがある点には、注意が必要です。

今回はサンゴイソギンチャクを飼育する際に知っておきたい基本的な性質と、クマノミ類やそのほかの海水魚との相性についても掘り下げて紹介します。


サンゴイソギンチャクとは

生物学的情報
名前サンゴイソギンチャク
学名Entacmaeaエンタクマエア quadricolorクアドリコロル
分類ウメボシイソギンチャク科エンタクマエア属
食性雑食
分布西部太平洋
飼育要件
飼育しやすさ★★★☆☆
イソギンチャクとしては容易
入手しやすさ★★★★★
よく見かける
混泳しやすさ★★☆☆☆
混泳不向き
サンゴとの相性★★★☆☆
注意を要する
最大体長8cm程度
適正水温23~26℃
比重1.021~1.024
備考ソフトコーラルが飼育できている環境が必要

日本近海でも房総半島以南の海で見られるイソギンチャクです。

日本のアクアリウム市場ではクマノミと共生するイソギンチャクとしては最もポピュラーな種類です。
また共生イソギンチャクとしては最も丈夫で飼いやすい部類に入ります。

見た目の特徴は触手の中間が丸く膨らむことと触手に連続した線状の模様が入ること。
このラインの有無が近い種類との見分けるポイントのひとつになります。

定着場所は特に定まっておらず、水流や光などそのときの好みの場所を求めて水槽内を動き回ります。
有性生殖だけでなく分裂によるクローン増殖も行うことが知られています。

この仲間の注意点として、水槽内をよく動き回るのでフィルターの吸水パイプやサーキュレーター(水流ポンプ)に吸い込まれないように注意する必要があります


バリエーション

オオサンゴイソギンチャク

触手が大きく膨らまないのが特徴のひとつです
学名:Entacmaeaエンタクマエア maximaマキシマ
日本近海に産するサンゴイソギンチャクの一種です。
海外ではサンゴイソギンチャク(Entacmaea quadricolor)としてまとめられていますが、日本では独立した別種として扱われています。

サンゴイソギンチャクとの違いは下記の3点。
・触手が球状に大きく膨らまない
・分裂によるクローン増殖をしない
・直径が50cmを超える大型になる


サンゴイソギンチャクを購入して触手が球状に膨らまない場合は本種の可能性があります。

グリーン

※画像は触手先端にピンクチップが入るタイプ
触手全体が蛍光グリーンの色素を持っているタイプ。

採集場所や水深によって蛍光グリーンの乗りが違ってくるようで、生息場所の水深が深くなるほど蛍光色が濃くなる傾向があるようです。

ピンクチップ

触手先端にピンク色のスポットが入るタイプ。

サンゴイソギンチャクは分裂によるクローン増殖をするため、コロニー毎にこのようなピンクチップが入るか入らないか変わるようです。

このタイプにも蛍光グリーンや蛍光レッドが乗る個体がいます。

メタリックグリーン

蛍光グリーンの色素がさらに強くなったタイプ。
ここまで強い蛍光グリーンが乗る個体の入荷は稀です。

蛍光色の強い個体は深場にいることが多く、強い白色光を当てていると蛍光色が薄れてくることがあるためシアン~近紫外線領域の光を多く当てるようにしましょう。

レッド

触手全体に蛍光レッドの色素が入ったタイプ。
蛍光グリーンの個体と比べて数が少なく、稀にしか入荷しないため価格も高めです。

稀な理由としてはサンゴイソギンチャク(E. quadricolorグループ)が持つ色素タンパク質の性質が関係しています。
最初からこの色で生まれてくるのではなく、深場の安定した環境にいる老成個体の持つGFP(緑色蛍光タンパク質)がRFP(赤色蛍光タンパク質)に変化することで現れるようです。

レッド&グリーン

蛍光レッドと蛍光グリーンが同時に入るタイプ。
その正体はGFP(緑色蛍光タンパク質)がRFP(赤色蛍光タンパク質)に変化している最中の個体とされています。

このタイプのカラーパターンは触手先端にいくほど赤く、触手根本から口盤にかけて緑色になっている個体が多く見られることから、蛍光タンパク質の変化は触手先端から起きるものと考えられます。

イレギュラーカラー

蛍光グリーンの色素がさらに強くなったタイプ。
このタイプもレッドタイプ同様に稀にしか見られません。

触手先端に赤みが入り、蛍光黄緑~緑色のグラデーションがたいへん美しい色合いをしています。
グラデーションのパターンが同じでありつつも、触手先端の赤い蛍光色を持った領域が違うものが見られることから、GFPからRFPへ色素タンパク質が変化を起こし始めた個体と考えられます。

水温で変化する色素の挙動

サンゴの仲間も広く赤色蛍光タンパク質を持ちますが、サンゴイソギンチャクの仲間が持つクレードのものは特殊な性質を持っているようです。

それは多くの蛍光タンパク質が28℃前後で活発化しやすいのに対し、サンゴイソギンチャクの仲間が持つ赤色蛍光タンパク質は27℃以上で退色する性質があるということ。

夏場の高水温時に停電やクーラーの故障が起こった場合、イソギンチャクが無事でも一時的な高水温に晒された影響で色が薄くなる可能性が考えられます。

万が一の事態のために、予備電源などを用意しておくことをおすすめします。


緑色蛍光タンパク質(GFP)から赤色蛍光タンパク質(RFP)への変化

触手先端から色素タンパク質の変化が起きていると思われる個体
色素タンパク質の変化が口盤近くまで進行してきた個体

サンゴイソギンチャクの持つ赤色蛍光タンパク質は緑色蛍光タンパク質から変化して現れるということが判っています。
つまり赤と緑の2色のものは蛍光タンパク質が変化している途上の個体とのことで、やがては赤1色に変化する可能性があるようです。

赤い蛍光色を持つ個体はやや深場で見つかることが多いということから、長期間深場の安定した環境でエネルギーの大きい紫外線寄りの光を浴び続けた老齢の個体が赤い蛍光色を持つようになると考えられます。


相性の良いクマノミ

クマノミとイソギンチャクの相性は元々の生息海域によって変わります。

例えば砂地の多い海域に生息するクマノミは砂地を好む共生イソギンチャクと、岩礁に生息するクマノミは岩の間を好む共生イソギンチャクに入りやすい傾向があります。

サンゴ礁(岩礁)海域で見られる組み合わせの一例
センジュイソギンチャク+カクレクマノミ
砂地の海域で見られる組み合わせの一例
イボハタゴイソギンチャク+ナミクマノミグループの一種

本来自生している海域にいない種類のイソギンチャクであっても、生態の似たイソギンチャクであれば入り込むことがあるのが観察されています。

個体の性格にもよりますが、ある程度はイソギンチャクの代替が効くようです。

このことからクマノミとイソギンチャクの相性はベストな組み合わせ(本来の自生海域における共生相手)はあっても、共生しないと言われるイソギンチャクでも入るケースがあります。

ワイルド個体を基準とした場合

サンゴイソギンチャクと相性の良いクマノミは、ワイルド個体を基準とした場合は以下の3種です。

ナミクマノミ
Amphiprion clarkii
ハマクマノミ
Amphiprion frenatus
スパインチーク
Premnas biaculeatus
3種のクマノミに共通しているのは
・体長が最大で15cm前後ほどになる
大きく育ち、ペアを組むと他の魚への攻撃性が強くなってくる
この2点です。

サンゴイソギンチャク+ペア飼育をする場合は、混泳魚の数を控えめにして60×45×45cmほどの水槽を用意しましょう。

ブリード個体の場合

ブリード個体の場合はポピュラーな種類のクマノミであれば、ほとんどの種類がサンゴイソギンチャクに入ってくれるかと思います。

ただし、カクレクマノミは個体によってサンゴイソギンチャクを好まないものもいることがあります。どちらかといえば生息海域が重なるタマイタダキイソギンチャクのほうを好むことが多いようです。

カクレクマノミはサンゴイソギンチャクに入ってくれる個体もいますが
どうしても入ってくれない場合にはタマイタダキイソギンチャクがおすすめ

有用なアイテム

おすすめの組み合わせは次の通りです。

水槽フィルター底床海水
30~60cm外掛け、上部、外部サンゴ砂フレーク、顆粒(沈下性)人工海水

サンゴイソギンチャクは比較的丈夫で飼いやすい種類なので、小型の水槽でも機材を整えれば飼育することが可能です。水量を目安にした場合は30cmキューブのハイタイプ水槽(30×30×40cm)か45cm水槽が最小のラインになります。

また、プロテインスキマーなど設置する機材や総水量を考慮するとオーバーフロー水槽の使用がおすすめです。

イソギンチャクもサンゴの仲間なので水流が重要です。
必ずサーキュレーターを設置しましょう。

メインで使用するものには自然の波のような揺れを再現する水流コントローラー付きのものを選びましょう。

サンゴイソギンチャクは水槽内を自由に動き回るため、サーキュレーターに吸い込まれないように吸い込み防止ガードを付けましょう。

60×45×45cm水槽以上の大型水槽向け

イソギンチャクの飼育にはサンゴ水槽と同じシステムが必要です。
必ずベンチュリー式のプロテインスキマーを設置しましょう。

「ゼンスイ エターナルナノスキマー QQ1」と「アクアリウム システムズ スキムM-80」は60cm以下の水槽に幅広く対応できる、汎用性の高いプロテインスキマーです。オーバーフロー水槽でない普通の水槽でも使えるハングオン(外掛け)型のベンチュリー式プロテインスキマーです。

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オーバーフロー水槽では高性能なインサンプ(投げ込み)型のプロテインスキマーを使いましょう。性能の良いものが用意できれば、その分だけ飼育も楽になります。

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一般的なサンゴ砂で問題ありません。

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お好みでカルシウムサンドなどを使っても大丈夫です。

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サンゴイソギンチャクは岩場を好むので、ライブロックやサンゴ岩などで石組みを汲んであげましょう。ライブロックレプリカを使用しても問題ありません。

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基本的にエサは必要ありませんが体力がない個体にはサンゴ用の栄養剤を使ってトリートメントしてあげましょう。

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イソギンチャクは広義のサンゴの仲間なので、サンゴ飼育に適した人工海水を選びましょう。
比重は1.021~1.024程度が適正値です。
溶解量は水温によっても変化しますが、水1Lあたり約35gの溶解が目安となります。

サンゴの仲間は比重が高い環境には強いですが、比重が低い環境には弱いです。
比重計のズレが命取りになることもありますので、なるべく信頼性の高い屈折計やデジタル比重計を使いましょう。

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混泳について

魚との混泳

サンゴを食べる生体と一緒(いわゆるポリプ食と呼ばれるタイプ)でなければ混泳可能です。
チョウチョウウオや、カーリー対策用のシュリンプとは相性が悪い点に留意が必要です。

イソギンチャクは一般に刺胞毒で魚を弱らせて捕食しますが、サンゴイソギンチャクに関してはこの毒があまり強くはありません。

マリンアクアリウムにおいて一般的に販売されている魚種であれば、健康な個体が捕食されることはまずないでしょう。

混泳相手混泳相性備考
ヤッコ・エンゼル
×ポリプ食の種とは混泳できません。
チョウチョウウオ・ツバメウオ
×ポリプ食の種とは混泳できません。
ハギ・ニダザイ
まれにイソギンチャクを突つく個体がいます。
クマノミ
混泳に関しては問題ありません。
ただし、サンゴイソギンチャクを好んで入るクマノミは限られます。
カクレクマノミは入りづらい傾向があります。
スズメダイ
基本的には問題なく混泳できます。
しかし、クマノミを一緒に飼う場合はケンカをするので混泳は避けましょう。
ハゼ・ゴビー
基本的には問題なく混泳できます。
ベントス系のハゼがいる場合は、砂を掛けられてしまうと弱ってしまいます。
この場合なるべく底床から離し、ライブロックの上などに配置しましょう。
カエルウオ・ブレニー
基本的には問題なく混泳できます。
ベラ
基本的には問題なく混泳できます。
ハナダイ・ハナゴイ
基本的には問題なく混泳できます。
ニセスズメ・バスレット
基本的には問題なく混泳できます。
テンジクダイ
基本的には問題なく混泳できます。
ジョーフィッシュ・サンゴアマダイ
基本的には問題なく混泳できます。
砂を掛けられてしまうと弱ってしまいます。
なるべく巣穴から離し、ライブロックの上などに配置しましょう。
フグ・カワハギ・モンガラ
×一部の小型種以外はサンゴイソギンチャクの触手を嚙みちぎることがあります。
ゴンベ・トラギス
基本的には問題なく混泳できます。
しかし、一部の種類には気が荒いものがいるためクマノミを一緒に飼う場合は混泳に注意が必要です。
アナゴ・ウツボ
×適した飼育設備が異なるため不可。
チンアナゴ
しっかりとしたろ過設備がある水槽なら可能。
マンダリン・スクーター
基本的には問題なく混泳できます。
タツ・ヨウジウオ
タツが尻尾で掴まれる場所が必要です。
ない場合はイソギンチャクの触手に巻き付こうとすることがあるので、おすすめはできません。

海藻水槽であれば混泳は可能です。
カエルアンコウ・カサゴ
×
適した飼育設備が異なるため不可。
エイ・サメ
×適した飼育設備が異なるため不可。
サンゴイソギンチャクの混泳相性表
※混泳相手の種や性格によっては、例外もあります。
◎・・・混泳に適した組み合わせです。
〇・・・混泳は可能ですが、種や個体の性格によっては工夫が必要な場合もあります。
△・・・混泳は不可能ではありませんが、適しているとは言えません。工夫次第で可能になる場合もあります。
×・・・混泳には適さない組み合わせです。

サンゴイソギンチャク まとめ

サンゴイソギンチャクはイソギンチャクの中では入門向けとされ、最も丈夫な部類に入る飼いやすい種類です。

ただしイソギンチャクというグループ自体があまり初心者向けではなく、長期飼育にはそれなりの知識と経験を要します。最低限でも一般的なソフトコーラルが飼育できている環境と設備が必要です。

初心者が失敗してしまう最大の要因として、飼育環境が整っていないままサンゴイソギンチャクを購入してしまうケースが多いのです。

そのため、サンゴイソギンチャクを購入される前に、「サーキュレーター(水流ポンプ)」「プロテインスキマー」「サンゴ飼育用の照明」の3点が揃っていることを確認しましょう。

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▼共生イソギンチャクの基本はこちら

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