潮が引いて海水が取り残されたタイドプール、潮だまりにはさまざまな生物がいます。
でも、中にはなんだかまぎらわしいものも……。
その代表格がアメフラシとウミウシではないでしょうか。
ツノがあるからアメフラシ?いいえ、両者ともにツノはあります。
それぞれの違いは何か、さまざまな角度から見てみましょう!
アメフラシとウミウシの共通点
本題に入る前にまずは共通点から見てみましょう。
実は貝の仲間
アメフラシ、ウミウシのどちらにも歩くための足はありません。
のそのそとはうように移動する姿からナメクジの仲間と思われがちですが、分類上でいうとどちらも巻貝の仲間(無脊椎動物)になるんです。体の外側を包むような貝殻はありませんが、アメフラシは体の内部に貝殻を持っています。ウミウシの中にも貝殻を残す種類がいるようです。
雌雄同体である
また、オスメスの区別がない雌雄同体という点も共通です。
十分に成長した2匹が出会えば繁殖が可能になります。
次の点は違いになりますが、アメフラシは体の前がオス、後ろがメスという構造からいくつものアメフラシが連なってることがあります。これは連鎖交尾と呼ばれるもので、5匹以上が連なることも……。
大きさ・色でわかる。アメフラシとウミウシの違い
大きさを見てみると、アメフラシのほうが大きくて目立ちます。磯遊びでも20cm前後をよく見かけるのではないでしょうか。ウミウシはアメフラシに比べると小さめ。手の中に収まるサイズも多く、簡単には見つからないかもしれません。
色を見てみると、アメフラシは茶~黒っぽい地味な色をしたものがほとんど。カタツムリのようなツノと背中のヒダを持っていて、アメフラシと呼ばれるものはたいていこの特徴が見られます。ウミウシは「海の宝石」とも呼ばれるとおり、とってもカラフル。種類によってナメクジ型やイボイボ、レタス風などその姿もさまざまです。ウミウシというだけあって、ツノはやはり牛っぽい形をしています。
見ていて楽しい!カラフルなウミウシたち
つつくとわかる。アメフラシとウミウシの違い
アメフラシをつつくと、背中から紫色のインクを吐きます。それが水中で雨雲のように見えるため「アメフラシ」の名前がついたとも。
イカやタコが墨を吐いて逃げるように、捕食対象になりやすいアメフラシは紫色のインクを吐くという防御能力を身に付けているのです。
近年、アメフラシの防御能力について研究が進み、アメフラシは天敵をインク液で視覚を撹乱させながら、同時に放出する白い粘液の化合物で天敵を混乱させていることがわかってきました。
なお、ウミウシに紫色のインクを出す作用はありません。ウミウシはカイメンやサンゴを食べ、防御に有効な物質を自分の武器に置き換えて放出するとされています。こちらの防御能力も興味深いですね。
話が逸れてしまいましたが、インクを出す、出さないでアメフラシとウミウシを判別することができます。
卵でわかる。アメフラシとウミウシの違い
アメフラシの黄色い卵、何に見えるでしょうか。この形状からアメフラシの卵は「うみぞうめん(海素麺)」とも呼ばれていて、春から夏にかけて見ることができます。
筆者スズキは幼少のころ、「こんなところにラーメンが落ちてる!」なんて思ったものです。
一方、ウミウシの卵は岩に咲く花のように見えますね。ウミウシの卵は赤やピンク、黄色に白など、カラフルなものが目立ちます。また、卵は左巻きという不思議な共通点があるようです。ウミウシの多くは夏に産卵します。
飼育難易度はアメフラシもウミウシも高め
アメフラシもウミウシも、どちらも飼育難易度は高め。
生き物として謎も多く、飼育方法も確立されていないためです。
海水飼育に慣れていない場合、安易に持ち帰らず観察だけにとどめておきましょう。
なお、アメフラシは海藻類をエサとするため、水槽によっては海藻除去(コケ取り)要員としても活躍します。
チャームで取り扱っているアメフラシの仲間
飼育に適した環境と必要なアイテム
アメフラシ、ウミウシを飼育する際は、できるだけ自然下に近い環境に近づけてあげましょう。
岩礁地帯はライブロックを多めに投入することで、水槽内に岩礁を作ることができます。さまざまな微小生物がすみ着いたライブロックには水質浄化作用があり、微小生物はウミウシのエサにもなります。
水温は24℃前後が適しています。水換えは2週間に1回、水槽の3分の1をめやすに行ってください。
飼育には、以下のものを準備します。
水槽
アメフラシは30㎝前後まで成長します。45㎝水槽を選ぶと良いでしょう。
ウミウシは成長しても10㎝程度と比較的小さい種が多いのですが、水槽が大きいほど水質が安定しやすいため45㎝水槽を選んだほうが良いでしょう。
フィルター
基本的に外部フィルターで大丈夫です。海水水槽では淡水よりもアンモニアの毒性が強くなることから、淡水での推奨サイズよりひと回り以上容量の大きい機種、45㎝水槽であれば60㎝水槽以上のものを選びましょう。
プロテインスキマー
海水水槽ではプロテインスキマーという機材も使われます。
魚のみの飼育であれば必要ではありませんが、アメフラシやウミウシといった無脊椎動物を飼育する際にプロテインスキマーが必要になります。
水槽用クーラー
アメフラシやウミウシといった無脊椎動物は海水魚以上に高水温に弱いため、水温が30℃に達する環境では飼育できません。水槽用クーラーがない場合、夏場のルームエアコンは常に稼働させる必要が出てきます。ただし、ルームエアコンで室温を調整しても水槽内の水温が変動する場合があります。
人工海水
水槽管理をする上で、基本的には人工海水がおすすめです。人工海水の素なら自然の海に近い成分で清潔な海水を作ることができます。
食卓塩で海水は作れません
自然の海水には、さまざまなミネラルが含まれています。食卓塩は成分のほとんどを塩化ナトリウムが占めており、水に溶かしただけの食塩水では生物は生きていけません。
エサ
アメフラシ、ウミウシの飼育で難関といわれるのが給餌です。
海藻を食べて生きているアメフラシは、海藻除去(コケ取り)要員として導入するとハネモやシオミドロなどの除去に有効です。ただし、海藻がなくなると餓死してしまうため、アオサやウミブドウを与えてください。
一方、ウミウシは肉食または雑食がほとんど。ほぼ決まったものしか食べない専食性、いろいろ食べるストライクゾーンが広い広食性といる上、個体差もあることが飼育の難しさを高めているようです。
肉食の場合、イソギンチャクやサンゴ、カイメン、エビまたは微小生物を食べるとされています。混泳相手に気を付けてください。
チャームならカイメン・スポンジも取り扱っています!
ライブロック
ライブロックとは、サンゴの死骸などの表面に石灰藻などが付着したものです。内部に小さな隙間が無数にあり、そこにゴカイをはじめとした微小な甲殻類や水を浄化するバクテリアなどの微生物がたくさん生息しています。
水槽に多く投入することで、自然下の岩礁に近い環境を再現することができます。
チャームでは色鮮やかでユニークなウミウシを取り扱っています。
海水飼育に慣れたらぜひお迎えしてみてくださいね。
まとめ
似ているようでとっても違うアメフラシとウミウシ。
まだまだ多くの謎に包まれた生き物です。
磯で見つけたらぜひ観察を楽しんでくださいね。
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