ギンポの魅力
ギンポ(ブレニー)の世界へようこそ。
ギンポとは、スズキ目ギンポ亜目の魚種の総称です。
アクアリウム用に“ギンポ”または“ブレニー”として流通する魚種は、多くがイソギンポ科に属します。
このため、ここではイソギンポ科の魚種を中心にご紹介します。
ギンポの仲間はにょろにょろとした体形と、強い藻食性を持つことが知られています。
このため、海水水槽におけるコケ掃除要員、クリーナーフィッシュとしての人気が高いグループです。
体色はどちらかといえば保護色となる種が多く、全体的にはやや地味めな印象となります。
しかし、フタイロカエルウオなど中には鮮やかな色彩を持つ種もいます。
お好みで選ぶと良いでしょう。
ギンポの仲間は体色こそ目立たない種が多いものの、よく見ると愛嬌のある顔つきをしています。
にょろにょろとした体をくねらせてライブロックや底砂上を這いまわる姿もユニークです。
このように、体色ではなく行動に着目すると、見ていて飽きの来ないグループでもあります。
基本的にはクリーナーフィッシュとしての需要が主ですが、一部にはコアなファンもいます。
それでは、コケ掃除要員に留まらず、ユニークな容姿と行動が愛くるしいギンポの世界へ。
あなたを誘いましょう。
ギンポ(ブレニー)とは
ギンポ(ブレニー)とは、スズキ目ギンポ亜目に属する魚類の総称です。
アクアリウムにおいて流通する種は多くがイソギンポ科に属しており、「〇〇ギンポ」または「〇〇ブレニー」という名前で流通するものが多いです。
マリンアクアリウムにおいてはコケ取り役として古くから親しまれているグループです。
全体的に水質にはさほど敏感でなく丈夫で、底生の魚種は比較的性格も温和で混泳もしやすいです。
概ね混泳は安全ですが、遊泳性の種類は攻撃性を持つものもいます。
すべての種が温和ではない点には留意します。
ちなみにこのグループは「ギンポ」「ブレニー」「カエルウオ」という3種類の呼称が登場します。
ほぼ同じグループを指してはいるものの、厳密には対象となる魚種は微妙に異なります。
ギンポ(ブレニー)の魅力
海水水槽のコケ掃除役
ギンポの仲間は海水水槽のコケ掃除役として定番です。
ヤエヤマギンポをはじめとしたイソギンポ科の多くの種は、藻類を好んで食べる性質があります。
このため、ガラス面やライブロックに生えた藻類を積極的に食べてくれるため、海水水槽の掃除役として古くから重宝されています。
実はコレクションしても楽しい
ギンポの仲間は意外と種類豊富です。
イソギンポ科だけでも300種以上存在することが知られており、「カエルウオミックス」などとして正体不明の種が入荷することも多いです。
全体的にどの種も積極的に藻類を食べてくれるものが多いため、定番種以外もその多くは個性的なコケ取り要員として活躍してくれます。
コケ掃除要員としてありながら、コレクション性も楽しめるのがこのギンポ類のもう一つの魅力といえるでしょう。
国内で採集も可能
ギンポの仲間は日本にも分布しています。
各地に生息しており、磯場であれば子供でも簡単に捕獲できるなじみのみ深い海水魚です。
全体的に保護色を持つ種が多いため、色合いは地味めです。
チョウチョウウオに比べると簡単に捕まえられるので希少性も高くなく、人気もそれほど高いわけではないようですが、熱心に狙う方もいるようです。
アクアリウムにおいて流通する種は南方系の種が中心となりますが、ギンポ類自体は北~東日本にも広く分布しています。
主なギンポ(ブレニー)
比較的流通が見られる、主な魚種をピックアップして紹介します。
ヤエヤマギンポ
学名:Salarias fasciatus
最大サイズ:約15cm
海水水槽のコケ取りとして最もポピュラーな種です。
淡水の熱帯魚で言えばオトシンクルス、サイアミーズ・フライングフォックスのように、小型水槽なら1匹でまかなえてしまうほどコケ取り能力の高い魚として知られています。
日本では八重山諸島でよく見られることが和名の由来となっています。
八重山諸島以外にも、西部太平洋~インド洋と広範囲に分布しています。
基本はモノトーンな体色ですが生息地域ごとに若干の変異があり、赤や青のスポットが入る個体がまれに見られます。
フタイロカエルウオ
学名: Ecsenius bicolor
最大サイズ:約8cm
西部太平洋~インド洋に分布するカエルウオです。
最もポピュラーなカエルウオで、体の後ろ半分が朱色に染まりくっきりと2色に分かれています。
コケ取りとしても有用ですが、人工飼料に餌付くとあまりコケを食べなくなることがあります。
ロウソクギンポ
学名: Rhabdoblennius ellipes
最大サイズ:約8cm
西部太平洋に分布するギンポです。
体型はフタイロカエルウオ、体色はヤエヤマギンポに近い印象を持った種です。
成熟したオスは頭部は青、腹部は黄色に染まった美しい体色に変化します。
自然下ではタイドプールなどの浅場に生息し、岩の窪みから顔だけ出していることが多いです。
飼育は容易で人工飼料にも餌付いてくれるほか、藻類も食べます。
スマイリーブレニー
学名:Ecsenius yaeyamaensis
別名:イシガキカエルウオ
最大サイズ:約6cm
“八重山産の”を意味する種小名の通り、沖縄方面で多く見られる小型のカエルウオです。
体色は乳白色をしており、あごの黒い線は口元が笑っているように見えます。
主に岩穴に生息しており顔だけ出して周りをうかがっていることが多いです。
イエローテールブレニー
学名:Ecsenius flavipes
最大サイズ:約8cm
西部太平洋に分布するブレニーです。
全身が濃いブラック、尾の先がイエローに染まるのが特徴です。
丸みのある顔に鋭い牙がのぞかせるので、一見恐そうに見えるかもしれません。
しかし、藻食性のため水槽に発生した藻類を食べてくれるクリーナーフィッシュとして活躍してくれます。
また人工飼料にも馴れやすく、丈夫で飼いやすい種類です。
ツースポットブレニー
学名:Ecsenius bimaculatus
最大サイズ:約5cm
西部太平洋に分布するカエルウオです。
大きくなっても5cm程度と、カエルウオの中では最も小型の種類です。
ツースポットの柄が顔文字に見えてしまうようなユニークさが本種の魅力といえるでしょう。
サンゴの上にちょこんと乗ったり岩の間からひょこっと顔を出したり、とぼけた表情と愛くるしい仕草はずっと見ていても飽きのこない種類です。
インドカエルウオ ブラック
学名:Atrosalarias fuscus
最大サイズ:約12cm
西部太平洋に分布するギンポです。
幼魚は黄色っぽい体色をしていますが成長につれて黒へと変化していきます。
藻類を主食にしているため、コケ取りとしてよく飼育されます。
同種や近縁種とはケンカをするので、複数飼育する場合は隠れることができる場所を多くすると良いでしょう。
ヒトスジギンポ
学名:Ecsenius lineatus
最大サイズ:約8cm
西部太平洋に分布するギンポの仲間です。
その名の通り、体に黒色縦縞模様が入る印象的な特徴を持っています。
岩穴や貝殻に身を潜める習性があり、顔だけ出して周りをうかがっている様子がなんともかわいらしい種類です。
他のカエルウオと同様、藻類を食べてくれるのでクリーナーとしても活躍してくれます。
遊泳性のギンポ
アクアリウムにおいて流通するギンポはほとんどが底生ですが、一部遊泳性の種も存在します。
遊泳性の種は底生の種に比べ攻撃性が強く、藻類をあまり食べない傾向があります。
とはいえ遊泳魚としては独特な行動が魅力的で、飽きの来ない観賞魚です。
こちらのタイプの流通量は少なめです。
オウゴンニジギンポ
学名:Meiacanthus atrodorsalis
最大サイズ:約10cm
西部太平洋に分布する、遊泳性ギンポです。
淡い白色の体色をベースに、頭から尾ビレにかけて青から黄色のグラデーションがかかる美しい魚です。
下アゴに比較的大きな鋭い犬歯と弱毒の毒腺を持っています。
人間でもかまれるとわずかに腫れることがあるので注意が必要です。
ニジギンポの仲間は一般に攻撃性が強いものが多いとされますが、本種自体は大人しい部類に入ります。
基本的に攻撃されない限り、自らかみつくことはありません。
ペアを組んだ場合は縄張り意識が強くなります。
気の強い魚との混泳は、避けたほうが無難です。
コンビクトブレニー
学名:Pholidichthys leucotaenis
最大サイズ:約30cm
フィリピン以南の西部太平洋に分布する遊泳性ギンポです。
古くから記載されている一属一種のギンポの仲間で、幼魚期にゴンズイに擬態することが知られています。
ゴーストのような不気味さとユーモラスな雰囲気を合わせ持つ不思議な魅力の魚です。
また、成長と共に模様が変化し成魚になるとマーブル模様となり、この模様がコンビクト(Convict)『囚人』の名前の由来となっています。
丈夫で人工飼料にもよく餌付き飼いやすい種類ですが、ある程度流れのある環境を好むので、リーフタンクでの飼育が適しています。
温和な性質なので他魚やサンゴに害を与えることはありませんが、気の強い攻撃的な魚を入れると虐められてしまう可能性あります。
また、隠れることのできるシェルター(ライブロック)を用意してあげると落ち着きます。
幼魚期はゴンズイに擬態する為、複数匹で群れを作らせ泳がせるとよいでしょう。
最終的に30cmとやや大型に成長しますので、90cm以上の水槽での飼育がおすすめです。
ウナギギンポ
学名:Xiphasia setifer
最大サイズ:約80cm
非常に長い体が特徴的なギンポです。
水深30m程度の砂泥域に生息しており、砂に潜る習性があるといわれています。
しかし、飼育下ではあまり潜らず、むしろ遊泳していることのほうが多いようです。
本種は鋭い歯を持っており、水槽からの飛び出しも多いため取り扱いには注意が必要です。
パイクブレニー
学名:Chaenopsis alepidota
最大サイズ:約10cm
カマスのような大きな口を持つギンポです。
主にカリブ便で入荷する種類で、細長い体形を持ちますが小型種となるようです。
普段は岩の下や巣穴に隠れており、外敵が近づくと大きく口を開けて威嚇を行います。
ニセクロスジギンポ
学名:Aspidontus taeniatus
最大サイズ:約12cm
クリーナーフィッシュとして有名なホンソメワケベラそっくりに擬態した遊泳性ギンポです。
大型魚の寄生虫を食べてくれるホンソメワケベラのふりをして近づき、鱗や皮膚をかじって食べてしまいます。
見分け方としては背ビレの形状及び、ホンソメワケベラは口が吻の先端に位置しますが、本種はやや下部に位置します。
その性質上、他の魚の皮膚や鱗をかじり取るため、混泳には向かない種類となります。
ハナダイギンポ
学名:Ecsenius midas
最大サイズ:約12cm
「〇〇カエルウオ」などさまざまな種が流通するニラミギンポ(Ecsenius)属としては珍しい遊泳性ギンポです。
インド洋、中・西部太平洋と広範囲に分布しています。
名前の通りハナダイの群れに混じっていることが多く、動物性プランクトン等を捕食しています。
餌付きやすく大人しい種類ですが、ギンポ類にしては水質に敏感な面があります。
色彩変異に富み、黄色、茶色、橙色等さまざまなカラーバリエーションが知られています。
ギンポ(ブレニー)飼育の基本
基本的な海水魚飼育用の設備がそろっていれば、問題なく飼育できます。
基本的に熱帯性なのでヒーターは必要です。
水温は24℃前後を保つようにすると良いでしょう。
タイドプールで見られる種類は、比較的水質の変化にも強めです。
人工飼料にも餌付きやすく、比較的飼育しやすいグループです。
水槽の選択
生体のサイズに合わせ、30~90cm水槽が良いでしょう。
フィルターが設置できるものであれば、どのサイズでもOKです。
ギンポ類は10~15cm前後と比較的小型の種が多いため、60cm水槽で終生飼育できることも多いでしょう。
フィルター、照明が付いたセットならより安心して始めることができますね。
フィルターの選択
上部式フィルターまたは外部式フィルターが良いでしょう。
30cm以下の小型水槽の場合は、プロテインスキマー機能付きの外掛け式フィルターがベストです。
タイドプールに暮らす種はスズメダイやクマノミと同じく、さほど水質に敏感ではありませんが、遊泳性の種は水質に敏感な傾向があります。
プロテインスキマーは、基本的に設置することをおすすめします。
プロテインスキマーの選択
ギンポ類はタイドプールにも見られる種であれば水質の変化・悪化には強めの魚種ですが、遊泳性の種は水質の変化にやや敏感な傾向があります。
いずれにせよ、可能であれば設置しておくことをおすすめします。
フィルターにプロテインスキマー機能が付いていない場合は、水槽サイズに合った外掛け式のプロテインスキマーを1台設置しておくと良いでしょう。
底床の選択
海水魚飼育用の底床であれば、何を使用しても構いません。
「サンゴ砂」が最も一般的です。粒の大きさはお好みで構いません。
最初からバクテリアが添加されている「ライブサンド」を使うと、水槽の立ち上がりが早くなります。
砂利系の底床も使用可能です。
餌
比較的餌付きやすく、人工飼料もすぐ食べてくれることが多いでしょう。
餌付けにはあまり困らないグループです。
どちらかといえばコケ取り要員として採用されることも多く、藻類も積極的に食べてくれます。
コケ取りとして採用する場合、エサを与えすぎるとコケを食べなくなることがあります。
一方で、コケのみでは栄養が不足し痩せてしまいます。
ある程度は人工飼料を与えることも必要です。
バランスを見ながら与えるようにしてください。
混泳
ギンポの仲間は基本的に他種に対しては温和です。
ただし、同種及び近縁種に対しては、若干の攻撃性を見せることがあります。
体型の近い種に対しては多少の小競り合いが発生することもありますが、それでもひどいケンカにはならないことが多いです。
ライブロックなどを複雑に組み上げて隠れ家を多めに作っておくと、複数匹入れても問題なく共存できることが多いでしょう。
岩状のものと枝状のもの、異なる形状のライブロックを複数個組み合わせると特に有効です。
海水魚との混泳
体型の異なる種は攻撃対象にならないようです。
クマノミやスズメダイ、ヤッコなどは混泳可能です。
ハゼ類とも基本的には混泳可能ですが、生活圏がかぶるのでお互いが縄張りを主張しないよう若干の注意が必要です。
隠れ家を多く作っておけば、問題にはならないことが多いでしょう。
サンゴとの混泳
サンゴとの混泳相性は良好です。
ポリプにいたずらすることもなく、コケを食べてくれるのでクリーナーフィッシュとして喜ばれます。
ギンポ類の飼育は大変容易です。
しかし、サンゴの飼育は魚の飼育とは異なり、それなりの技術を必要とします。
はじめて飼育する場合にはやや難易度が高いので、留意しておきましょう。
ギンポ類の飼育において、サンゴは必須ではありません。
飼育に慣れてきたら、野生下の環境の再現のためにもぜひチャレンジしてみましょう!
病気
ギンポの仲間は比較的丈夫で、あまり病気にはかかりません。
導入してすぐは白点病にかかりやすいです。
白点病を発症してしまった際の治療には「マラカイトグリーン」を主成分とする魚病薬が有効です。
ただし、一度病気を発症した魚の治療は困難を極めます。
マラカイトグリーンはサンゴやイソギンチャクはじめとする無脊椎動物が入っている水槽には使用できません。
このため、隔離しての薬浴が基本となります。
白点病は一度発生すると、治りにくい厄介な病気です。
日頃からの予防策としては「白点キラー」も有効です。
こちらは魚病薬ではなく水質調整剤となります。
水中の原虫や菌の増殖を阻害し、発病や進行を予防することができる商品です。
既に白点病を発症している個体に関しては、自身の代謝能力で回復してもらう必要があるという点が、魚病薬との違いです。
ギンポ用語集
底生ギンポ・・・低層を這うようにして生活するギンポです。
アクアリウムで流通する大半のギンポはこのタイプに属します。
コケ取り要員として有用なのもこのタイプです。
どちらかといえば観賞よりも、クリーナーフィッシュとしての役割が期待される種が多いです。
遊泳魚とは生活圏が異なるのでトラブルを起こしにくく、比較的協調性は良いほうです。
同種・近縁種間や、生活圏がかぶるハゼ類とは小競り合いを起こすことがあります。
しかし、あまりひどいものにはならないので、隠れ家を増やせば問題なく混泳できることが多いでしょう。
遊泳性ギンポ・・・中層を遊泳するタイプのギンポです。
全体から見ると少数派となるタイプで、こちらはコケ取り要員としての活躍はさほど期待できません。
遊泳する行動がユニークなので、観賞魚として面白いのはこちらのタイプでしょう。
種類によってまちまちではあるものの、このタイプは歯が鋭くかみつかれるとケガをするので注意が必要です。
攻撃性が強い種類もおり、混泳の際は留意したほうが良いでしょう。
皮弁・・・イソギンポ科の魚種の多くが持つ、まつ毛のような突起物です。
具体的な役割に関しては詳しくわかっておらず、擬態用などと考えられているようです。
ギンポ類の表情が愛らしく見えるのは、この皮弁のおかげかもしれません。
皮弁の有無や形状が、種の判別に役立つ場合もあります。
犬歯・・・多くのギンポ類が持つ鋭い歯です。
かまれると人間でもケガをするほど鋭いですが、基本的に自らかみついてくることはまずありません。
ギンポ類がかみつくのは身の危険を感じた時なので、むやみに素手で触らないようにしましょう。
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