こんにちは、スズキです。先日、長らく自粛していた潮干狩りに行ってきました。
目当ての貝を探しつつ、さまざまな生き物に出会えるのも潮干狩りの楽しみですよね。
ところが、帰宅後にハプニングが発生。アサリの中に混じって―なぜ、そこにヤドカリが。
まさかのお持ち帰りです。食べるわけにもいかず、海に帰すには遠すぎて……。
ヤドカリって飼えるの?飼うにはどうすればいいの?
というわけで、捕まえたヤドカリ(水棲)の飼育方法を調べてみました!
飼育の方法・環境は生息地グループに合わせる
ヤドカリはカニやエビと同じ甲殻類の仲間です。「丈夫で飼育しやすい生き物」のイメージがあるかもしれませんが、どこに棲んでいるグループなのかによって飼育方法や飼育設備が異なってきます。
生息地からヤドカリを分類する
ヤドカリは陸に棲むものと水(海)に棲むものに大別できます。
海に棲むものはさらに、タイドプール(潮だまり)のような浅場にいるもの、
水深10mあたりにいてタイドプールまで上がってこない深場にいるものと分けられます。
このように、ヤドカリは生息地で分けると3パターンのグループがあります。
潮干狩りや磯遊びで見つかるヤドカリは、浅場にいるヤドカリというわけですね。
深場のヤドカリは非常にデリケートで、サンゴを飼育する設備が必要と初心者向けではありません。
その点、浅場のヤドカリは金魚を飼うような感覚で気軽に飼育することができます。
※今回の記事では、浅場にいるヤドカリに限定しています。
ヤドカリを同定する
捕まえたヤドカリが何者なのか。採集場所を生息地とするヤドカリの情報があれば、それに照らし合わせると簡単です。
自分で調べるも良し、誰かに聞いても良し。
今の時代、SNSなどで質問すれば親切な人が教えてくれるかもしれません。
ヤドカリを同定するポイント
①どこで採集したか
②左のハサミ脚が大(左右同じ)→ヤドカリ科
右のハサミ脚が大→ホンヤドカリ科
③歩脚の模様、目の色、触覚の色や形は?
④背負っている巻貝は何か?
ちなみに、スズキが潮干狩りをした場所は千葉県の某所。
ここのヤドカリは右ハサミ脚が大きなユビナガホンヤドカリが圧倒的多数を占める中、少数派の左ハサミ脚が大きなテナガツノヤドカリを持ち帰っていたのでした。
画像では分かりにくいのですが、羽根のような触覚も特徴の一つです。
こちらの個体はアラムシロを宿貝にしていると思われます。
磯遊びでよく見つかるヤドカリの種類
ホンヤドカリ…日本各地の磯に生息しており、高確率で出会えるヤドカリです。
ケアシホンヤドカリ…ホンヤドカリの近縁種。脚は毛むくじゃらで黒い斑点があります。
イソヨコバサミ…東京湾から沖縄にかけて生息。ハサミの大きさは左右同じ。青い触覚と歩脚の白いバンドが特徴的です。
チャームでは、日本近海産のヤドカリのミックスを取り扱っています。
ヤドカリの特徴
浅場にいるヤドカリは基本的に丈夫で飼育も簡単です。
もちろん、適切な飼育環境を整えることが前提にあります。いくつか特徴を押さえておきましょう。
夜行性である
我々が活発になるのは夜間。エサを食べるのも基本的に夜です。新鮮なものを食べたいので、エサは夜に用意してください。
雑食である
はい、雑食なので何でもよく食べます。人は我々のことを「海の掃除屋」というようですね。
プランクトン、小魚、海藻、野菜……。もちろん人工飼料でもOKですよ。
エラ呼吸である
我々、水棲ヤドカリはエラを使って呼吸をしています。エラ呼吸といっても、水中に酸素がないと困りますから。酸素はちゃんと供給してください。それと、勘違いする人がいるようですが陸地はなくても平気です。
ちなみに浜辺で見かける陸棲のオカヤドカリはエラと皮膚の両方で呼吸しています。
引っ越しをする
甲殻類仲間のエビとカニは全身をカラで覆われていますが、我々は腹の部分がむき出しです。そこで、巻貝を借りて腹を守っているというわけです。
脱皮をしながら大きくなります。巻貝のサイズが合わなくなると引っ越さなければなりません。
マイホーム選び、しっかり吟味したいので物件はいくつか用意してくださいな。
スキあらば脱走する
我々は脱走のプロ。足場になるようなものがあれば、それを伝って水槽外に逃げ出すなんて朝飯前。特に、動きが活発になる夜は注意されたし。
ヤドカリ飼育のポイント
ヤドカリの飼育はとても簡単。
定期的なエサやりと水換え、酸素の供給ができていれば大丈夫です。
- 足場としてサンゴ砂を水槽に敷きます。厚さは2~3cmあれば十分です。
- 隠れ家、引っ越し用の巻貝をいくつか入れておきます。
- 海水の量は少ないと水が汚れやすくなります。陸地はなくても構いません。
- エサやりの目安は2日に1回です。食いが悪かったらエサを代えてみましょう。
- エアーポンプ等で酸素を供給してあげましょう。
- フィルターで水質維持に努めましょう。
- 海水水槽の水換えは、2週間に1度、1/3の量がめやすとされています。
- 夏場は室温が35℃を超えるようであれば、クーラーで室温を管理します。
ヤドカリの飼育に必要なアイテム
ヤドカリの飼育には、基本的な飼育アイテムに引っ越し用の巻貝と隠れ家を用意します。
あとはレイアウト素材を使って、水槽をにぎやかにするのも楽しいですよ。
飼育容器
以下の点からフタ付きのガラス水槽がオススメです。
①ヤドカリがある程度自由に動き回れる→広さが必要
②歩きやすいよう底砂にサンゴ砂を敷く→アクリル水槽は傷が付きやすい
③脱走対策をする→フタが必要
サイズのめやすとして、少ない匹数(2~3匹)でも30cm以上の水槽を用意してください。
「少し大きいかな……」というぐらいがヤドカリにとってはちょうど良いです。
とりあえず緊急用の容器として、深さがあってツルツルしている、足場がないものを選んでください。
わが家に来たヤドカリも、夜中じゅう脱走を試みていました。かなりあきらめが悪いようです!
サンゴ砂
ヤドカリが歩き回れるよう底砂を敷きます。海水を使用する点、水質維持のしやすさからサンゴ砂がおすすめです。
砂粒の大きさは細目が無難です。パウダーは取り扱いがやや難しくなります。
人工海水
海で採集したヤドカリの飼育水には海水を用いましょう。水槽管理をする上で、基本的には人工海水がおすすめです。人工海水の素なら、自然の海に近い成分で清潔な海水を作れます。
食卓塩で海水は作れません
自然の海水には、さまざまなミネラルが含まれています。食卓塩は成分のほとんどを塩化ナトリウムが占めており、水に溶かしただけの食塩水では生物は生きていけません。
エアーポンプ
ヤドカリは水中で呼吸をします。水中にも酸素が欠かせないため、エアーポンプなどの酸素を供給するアイテムは必須です。エアレーション機能が付いているフィルターがあればそれで十分です。
フィルター
フィルタ―は、水質を維持するためのものです。食べ残しのエサやフンは水質を悪化させる原因とります。また、淡水と比較して海水は汚れやすいです。海水に対応しているものを選びましょう。
さまざまな形式がありますが、比較的リーズナブルである、水槽内部を占領しないという点から外掛けフィルタ―がおすすめです。
エサ(人工飼料)
人工飼料は沈むタイプのエサを選んでください。
ザリガニのエサとあるものは、大抵ヤドカリにも対応しています。
食べ残しは水を汚す原因となります。小まめに取り除くようにしてください。
消化吸収に優れたスティックタイプで、食べ残しや排せつ物が減り、水槽の水を汚しません。
隠れ家アイテム
ヤドカリのストレス軽減のためにも、サンゴのレプリカや流木などで隠れ家を作ってあげましょう。導入や管理のハードルが高いライブロックも、“レプリカ”ならお手軽です。
住み替え用の巻貝
ヤドカリは成長とともに、体に合った巻貝に引っ越します。ヤドカリにも好みがあるため、いくつか選択肢を与えましょう。
本物?レプリカ?水槽をにぎやかにしてみよう
まだまだあります!
採集はNG。オカヤドカリは天然記念物です
さて、ここからは少しだけ陸棲のオカヤドカリについての話です。オカヤドカリは、東京の小笠原諸島と鹿児島県以南(屋久島、奄美大島、沖縄本島、石垣島など)のみに分布しています。
陸棲といっても、浜辺で見かけるその姿はとてもかわいらしいものです。しかし、オカヤドカリは国の天然記念物に指定されており、一般の人は採集することができません。勝手に採集すると文化財保護法違反で罰せられます。
小笠原諸島のオカヤドカリは生息数の減少が心配されていますが、沖縄には数多くいます。
ビーチで貝殻を拾ったつもりがオカヤドカリだった……ということがないよう気を付けてくださいね。
また、沖縄ではビーチコーミングにおいて厳しい規制があります。浜辺に転がっているサンゴの骨格やサンゴ岩も持ち帰ることはできません。
チャームでは、採集を許可された指定業者からオカヤドカリを入荷しています。
入荷時期は4~9月のみ。ちょうど入荷シーズンなので、ぜひ一度チェックを。
まとめ
この夏、ヤドカリから海水飼育の趣味を広げてみませんか。
タイドプールで採集する際は、干潮時刻や天気を事前に調べておいてくださいね。
現地には干潮時刻の2時間前に到着できるようにすると長く遊べます。
採集して持ち帰るとき
ヤドカリと一緒に海水も持ち帰りましょう。
暑い(寒い)季節の持ち帰りには、発泡スチロールやクーラーボックスの使用をおすすめします。酸素不足になると弱ってしまうため、乾電池式の携帯型エアーポンプがあると便利です。
なお、夏場の暑い車内に放置してはいけません。
その他、採集に便利なアイテムがそろっています!
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